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歯の豆知識Tooth Trivia
2022.01.14
歯周病とウイルス感染の関係性
一章 そもそも歯周病はどんな病気?
二章 歯周病がウイルス感染を引き起こすメカニズム
三章 歯周病とウイルス感染を防ぐためのケア
おわりに 早期発見と早期治療が大切
はじめに 歯周病がウイルス感染の原因になる?
日本の成人のおよそ8割が発症しているともいわれる歯周病。
近年では糖尿病や高血圧、認知症など様々な慢性疾患の原因になることが示唆されており、注目を集めています。
その歯周病ですが、ウイルス感染症とも大きく関係していることをご存じでしょうか?
歯周病はウイルス感染症の発症及び重症化のリスクを高めてしまう可能性があるのです。
この記事では歯周病の発症メカニズムから、なぜ歯周病がウイルス感染のリスクを高めるのか、どんな対策が必要かなどについてご紹介します。
口内だけでなく全身の健康を守るため、歯周病とウイルスの関係について学んでいきましょう。
一章 そもそも歯周病はどんな病気?
歯周病は口内に生息する細菌によって、歯肉や歯を支える歯槽骨が破壊されてしまう炎症性の疾患です。
炎症とは体に受けたダメージを修復したり、ウイルスと戦ったりする際に起きる生体反応で、腫れや痛み、組織の機能低下などを伴います。
通常、軽度の炎症であれば時間とともに収まり、元の組織の機能を取り戻すことができます。
歯周病による炎症は長期にわたって起こり、自然治癒しにくいという特徴があります。
これは歯周病菌そのものを完全になくすことが困難なためで、細菌が原因となる疾患の中でも特に治りにくい病気と言えます。
歯周病は大きく4つの段階に分けられます。
1.プラークや歯石など、歯周病菌の住処となる場所が作られる。
2.歯周病菌の発する毒素によって歯肉に炎症が起き、歯周ポケットが作られる。
3.歯周ポケットが深くなり、歯を支える歯槽骨が溶かされはじめる。
4.歯槽骨が歯を支えられなくなり、歯を失う。
歯周病は初期段階ではほとんど自覚症状がなく、進行に気づきにくいという特徴があります。
軽い出血や腫れだと思って放置していたら、いつの間にか深刻な段階まで悪化していたというケースが多くあります。
高齢者を対象にした健康に関する調査などでも、歯のケアを怠ったことを後悔する方は多くいらっしゃいます。
歯周病はそれだけでも軽視できない病気ですが、歯を失うだけではない様々な疾患を招くことも歯周病の恐さです。
二章 歯周病がウイルス感染を引き起こすメカニズム
次にウイルス感染症の発症プロセスについて見ていきましょう。
まずウイルスは喉や鼻の粘膜に付着します。
ウイルスは粘膜のバリア機能を破り、体内に侵入して増殖を開始、それに伴って炎症を引き起こします。
その結果発熱や咳、鼻水、下痢、あるいはさらに重大な症状が引き起こされるのです。
歯周病菌もウイルスも基本的に、体の組織に定着して炎症を引き起こすことで発症に至るという点が共通しています。
一般的に歯周病は歯に付着したプラークや歯石から、ウイルスは喉や鼻、目などの粘膜から発症します。
歯周病がウイルス感染を引き起こすリスクとなるのは、この発症経路が関係します。
通常は喉、鼻、口腔内のなどの細菌に接する場所は粘膜や体液によるバリアで守られています。
細菌が付着しても唾液などの体液によって素早く洗い流され、仮にウイルスが侵入しても免疫反応によって即座に排除されるようになっています。
ウイルス感染を防ぐためには、こうした体内のバリア機能と免疫力が重要になります。
歯周病は、この大切な2つの機能を低下させてしまいます。
歯周病菌は歯肉に炎症を起こす毒素を出しますが、この毒素は喉の粘膜にも達して組織を傷つけ、喉のバリア機能を低下させます。
また、普段はウイルスが侵入しにくい歯茎の細胞を傷つけて炎症を起こし、ウイルスがそこから体内に侵入できる状態を作ってしまいます。
歯周病が進むと歯周病菌が血管内に侵入して全身に回ることが知られており、菌よりさらに小さなウイルスもまた同じように血管内に侵入します。
ウイルスの侵入を防ぐ体の働きが、歯周病によって弱まってしまうのです。
歯周病菌の出す毒素や歯周病菌そのものが血管内に入ると、全身の細胞で炎症が引き起こされます。
炎症は細胞組織と免疫機能の両方に負担がかかっている状態なので、ウイルスなどの感染症への抵抗力が下がります。
普段なら免疫で除去できるはずのウイルスの増殖を許したり、健康な時より重い症状になるリスクが高まる可能性があるのです。
最近では歯周病をもつ人は新型コロナウイルスの重症化率が高まる傾向にあるというデータも示され、歯周病と免疫力の関係性が改めて注目されています。
ある研究では、歯周病菌の一部に休眠中のウイルスを再活性化する働きがある可能性が示唆されています。
臨床的にはインフルエンザなどのウイルス感染症と歯周病の関係は以前から確かめられていましたが、最近になって少しずつ医学的な裏付けがなされてきました。
歯周病の予防治療の大切さは、これからますます広まっていくでしょう。
三章 歯周病とウイルス感染を防ぐためのケア
歯周病とそれに伴うウイルス感染などの様々な疾患の予防には、まず歯周病の発生と進行を抑えることが肝心です。
歯科医師や歯科衛生士から適切なブラッシング指導を受け、毎日の歯磨きで歯垢をしっかり除去することが大切です。
ブラッシングだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスも併用すると歯垢の除去率が高まります。
舌ブラシによる舌苔(ぜったい・舌についた細菌や食べかすによる汚れ)を取り除くことも歯周病菌の除去に役立ちます。
口呼吸による口内の乾燥や、甘い飲み物を頻繁に飲むことは避けましょう。
歯周病予防には日常のケアに加えてプロによる予防治療も大切です。
専用機械によるクリーニングで歯垢や歯石を徹底的に除去し、早期の歯周病を発見してケアすることで重症化のリスクを減らすことができます。
歯科の定期検診を受け、口内を常に清潔に保ちましょう。
ウイルスや歯周病菌と戦うには免疫力も重要です。
十分な栄養と睡眠を確保し、喫煙や過度の飲酒など免疫力を低下させる習慣は避けます。
歯周病菌自体に有効な薬はまだ開発されていないので、既に体内に侵入した歯周病菌と戦うには体が元々持っている免疫力を高めるしかありません。
食物繊維を多く摂って腸内環境を整え、たんぱく質やビタミン、ミネラルなど免疫細胞の働きを高める栄養素を意識的に増やすとよいでしょう。
おわりに 早期発見と早期治療が大切
歯周病は一度発症すると完治させることの難しい病気です。
放置する歯を失う可能性が高まり、慢性的な炎症による免疫力とバリア機能の低下によってウイルス感染症などの病気にかかりやすい体質になってしまいます。
歯周病対策に重要なのは普段からのケアですが、それだけでは完全に発症を防ぐことはできません。
歯科診療所での定期検診を受け、歯周病の早期発見、早期治療を行うことで発症した歯周病の進行は抑制されます。
ウイルス感染症をはじめとする様々な疾患を予防するためにも、適切なセルフケアと歯科検診を続けていきましょう。
歯科医師 院長 森川真作