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歯の豆知識Tooth Trivia

2021.05.10

入れ歯の必要性

こんにちは!春日井市高蔵寺駅近くにある歯医者、森川歯科クリニックの院長森川真作です。

加齢によって誰しも口腔機能は衰えてきます。

本日は入れ歯の必要性に関してはお話をしていきます。

入れ歯の必要性

口腔機能の衰えの加速度合いには様々な進み具合があり一般的には介護度が上がるに連れて口腔機能の衰えも進むと言われています。

認知症のかたも口腔については放置されていることが多いため認知症の患者様は進みが早いと言われています。

認知症

その要因は色々あり、

まずは本人の訴えが明確でないこと。

介護をする上で口腔清掃の優先度が低く口腔面に関して置き去りにされていること。

また、認知症により口腔清掃をする場合に動いたり手が出たりすることで介護者に危険が及んでしまい、

口腔清掃できずにそのままになってしまうことがあります。

この手が出ることを理由に口腔清掃を行っていない病院もあるのです。

ただでさえ加齢と共に口腔機能が衰えていくのに放置されてしまうとさらに衰えてしまいます。

認知症の方の口腔の状況は放置されている状態が病院の中でも起こっているのが現状です。

 

入れ歯の重要性

以前は入れ歯を装着して食事をしていたが、合わなくなったので外しておくようになった。

または、病院スタッフの判断で外しそのままになっているというケースは多くありますがそれはとてももったいないです。

 

入れ歯は高齢者というイメージを抱くかもしれませんが、実際に入れ歯には重要な役割があります。

1.噛む能力の維持

2.噛む力の向上による飲み込む力の維持

3.かみ合わせの高さの維持

4.舌、頬粘膜との均衡を保つ

5.顎関節の機能維持

6.咀嚼筋群の機能維持

7.見た目、発音機能の維持、etc・・・

ざっと挙げても入れ歯にはいろいろな役割があります。

まず知っておかなければならないことは、入れ歯も歯と同じように使えば使うほどすり減ってくるということ、

加齢と共に骨の形や粘膜の形態が変化するということです。

認知症の方の入れ歯製作は困難であることが多くあります。

そのため、製作自体も難航することがあり、うまくできあがっても最初のうちは痛みが出やすく安定してくるまで頻繁な調整が必要になります。また、安定した後も定期的な調整も必要となります。

入れ歯を新しく作ったのに1年経たないで痛みが出てきたとご家族の方で疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、骨の形態や粘膜の形態は変わってくるのでそれは普通の現象なのです。

入れ歯が合わないと思い、外したままで過ごしてしまうと身体が噛める位置を探して下顎の位置が上に上がるような状態になります。

そうすると顎の筋肉や顎関節が本来の動きとは変わってきてしまいますので食事が余計にしにくかったり飲み込みにくかったりと影響がでてきます。

そしてその状態で再び新しい入れ歯を作ったしてもまた慣れるのに時間がかかってしまい同じことの繰り返しになります。

他にも口腔機能が低下してしまったことによる弊害として口があまり開かなくなることがあります。

これは、ずっと入れ歯をいれていなかった人にみられます。

無歯顎の方で舌が大きい方がいらっしゃいますが、これは歯があることで頬の粘膜と舌は、お互いのバランスをとっていますが、

歯がなくなり歯槽骨が吸収することにより、いずれも肥大化する傾向があるからです。

歯がない部分は入れ歯などを作り、

噛み合わせを確立することで噛む筋力の衰え

飲み込む力の低下

発音

審美性の低下

顎関節異常

など、様々な障害を予防することになるのです。

 

認知症における口腔機能改善の困難さ

口腔機能は他でも書いたように「食べる」ということだけではないので患者の生活習慣を向上させる上で大切なものとなります。

ただ、認知症の方は明確な訴えを発することができないため周囲が細かい部分まで配慮しなければなりません。

 

口腔内の障害を改善しようと入れ歯などを作ってみてもきちんと入れ歯を装着し食事ができる方は経験上100%ではありません。

特に、認知症になる前から入れ歯を装着したことがなかった方は認知症が進んだ状態から入れ歯を装着すると激しく抵抗することがあります。

 

入れ歯に慣れていなかった方が認知症になった後に入れ歯に慣れるのは非常に難しいと思います。

そうなると口腔機能の低下が早くなっていきますので早期対応はやはり必要になるのです。

 

当院では認知症の方に入れ歯を製作する際には、家族への説明を必ず行います。

家族の希望で入れ歯を製作する場合は特にです。

入れ歯についての過大な期待は避けること、可能な限り起こりうる事をお話ししています。

 

入れ歯を装着し少しでも口腔機能なが向上すればそれがベストですが経験上「すんなり慣れる」または「全く慣れない」の両極端が多いと感じますので全てがうまくいくとは限らないのです。

認知症の方の歯科治療は、「どこまでやるのか?」と疑問に思う方もいらっしゃると思います。

私はやらなければゼロかマイナスにしかならないですがやればプラスになる可能性もでてくるため「ここまでならできるはず!」という考えの下に行っています。

どれくらい病院に口腔機能障害を持つ方がいらっしゃるかは分かりません。

一番分かるのは近くにいる看護師さんだとは思うのですが看護師さんも患者様の口腔機能を理解しておられる方は残念ながらごく一部で、急性症状が出た時や患者様からの要望がないと歯科へ紹介されないのが現状です。

家族の方が気付いたときに歯科受診を希望するのが良いかと思います。

認知症と口腔ケア

アルツハイマー病では後期、脳血管性認知症おいてはいずれの期間でも摂食・嚥下障害が生じる可能性があると言われています。

これはもはや認知症における合併症であると認識してもいい程であり、それに対応したリハビリ・食事の対応、口腔清掃が必要となります。

摂食・嚥下障害に伴う疾患としては「誤嚥性肺炎」が挙げられます。

これは嚥下機能の低下に伴う肺炎なのですが、不顕性誤嚥(微小な誤嚥)、舌や咽頭、喉頭の機能障害による明確な誤嚥、胃内容物の逆流による誤嚥などが原因となります。

不顕性誤嚥について認知症の方が特に生じやすいと考えると、原因である歯肉や舌、咽頭に付着している肺炎原因菌の除去は、誤嚥性肺炎の予防に大きく寄与するはずです。これはこれまでに発表された文献からも明らかです。

しかしこの誤嚥については認知症の有無に関わらず多くの高齢者の方に生じていると思います。

 

「自立」と「全介助」に分けることの危険性

看護師さんや介護士さんに患者様の歯磨きや入れ歯清掃などについて尋ねると、

「この方には自立してもらうためにも自分でやってもらってます」

「この方は自分でできるのでやってもらってます」

とだいたいこんな答えが返ってきます。

「自立」とは、目的を理解し、理想的な結果を伴う行いを為すことです。ただ単に行いを為すことではありません。

「やっている」ことと「できている」ことは大きく違います。

ですから「自立」と「全介助」のみの2つの選択肢にのみ分別してしまうのは非常に危険であると考えます。

例えば、自立を促すために本人に歯磨きをさせたとします。

手を動かすこと、口腔を刺激することといった面では評価されると思います。

歯磨きの目的である汚れを除去することができていないのであれば評価は著しく下がるでしょう。

たとえ本人に行いを為すことを促しても、必ず介護者のバックアップが必要となり部分的な介助や効果判定、評価などを行うことで初めて好ましい結果が得られると思います。

「自立」と言いつつも食事を摂ること、食後に歯を磨くこと、入れ歯を洗うことの目的を理解していないまま放置されている方々を多く見てきました。その多くが結果を伴わない自立だったのです。

できれば自立と全介助の両極端にするのではなく、必ず何らかのバックアップを忘れないようにしてください。

歯科医師 院長 森川真作

歯科医師 院長

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