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2021.11.26
訪問診療とは?
自宅で治療が受けられる、歯科訪問診療の内容についてご紹介します。
目次
はじめに 歯科訪問診療ってどんなもの?
一章 歯科訪問診療の対象となる方
二章 どうすれば歯科訪問診療を受けられるか
三章 歯科訪問診療の内容と期待できる結果
おわりに 最期まで自分の歯で食べるために
はじめに 歯科訪問診療ってどんなもの?
歯に異常があった時は、歯科医院に行って治療を受けるのが一般的ですよね。
しかし、様々な理由から歯科医院へ出掛けての治療が受けられない方はどうしたらよいのでしょうか?
そこで役立つのが、歯科の先生に自宅や滞在先の施設に来てもらって治療を受ける訪問診療です。
歯科訪問診療は高齢者など、歯科治療を必要としながらも外来による診療が困難な方に、適切な歯科治療を受けていただくための仕組みです。
この記事では、歯科訪問診療の対象となる方、診療の受け方や治療内容などを紹介していきます。
まだまだ認知度の低い歯科訪問診療がどんなものか学んでいきましょう。
一章 歯科訪問診療の対象となる方
歯科訪問診療は誰もが受けられる医療サービスではありません。
急患を診るための往診とは違い、訪問診療は外来として病院に来ることが困難な方を対象とした計画的、継続的な診療です。
どんな方が対象に含まれるかの明確な線引きはなく、患者の状態を見て個別に判断されますが、およそ以下の事情を持つ方が対象になります。
・高齢により通院が困難な方
・病気、障がい、怪我などによって通院が困難な方
・歯科や口腔外科のない病院に入院している方
・入所型介護施設などで生活している方
歯科訪問診療の対象となるのは通院が困難な方なので、デイサービスなどの通所型介護施設の利用者は含まれません。
また、歯科訪問診療は利用する歯科診療所から半径16km以内とされており、それを越えた場所では保険適用外なってしまいます。
ただし、交通や地理的な理由からやむを得ない場合は保険が適用されることもあるので、詳しくは診療先の歯科医院などに問い合わせてみましょう。
二章 どうすれば歯科訪問診療を受けられるか
訪問診療が可能な歯科医院は年々増えていますが、対応できない歯科医院も多くあります。
かかりつけの歯科医院が訪問診療可能でしたら、患者の状態を熟知している顔馴染みのお医者さんにお願いするのが一番です。
かかりつけの歯科医院が訪問診療できない場合は、近くにある訪問診療可能な歯科医院を紹介してもらうのがよいでしょう。
症状や治療経過の引き継ぎなども行ってもらえれば、スムーズに治療に移ることができます。
かかりつけの歯科医院がない場合、あるいは入所型介護施設や病院で生活している場合は、市区町村の保険窓口や施設スタッフに相談しましょう。
相談する際には、具体的な症状、行ってほしい治療、通院が困難な理由などを伝えます。
訪問診療は治療器具の持ち運びなども伴いますので、あらかじめ症状や治療の内容を対応してもらう医師にしっかりと伝えることが大切です。
三章 歯科訪問診療の内容と期待できる結果
歯科訪問診療では、歯科医院内で行われる治療とほとんど変わらない内容の治療が可能です。
ただし、個人宅や施設の中で治療を行う制約から、歯科医院内での治療が改めて必要になる場合もあります。
具体的な治療内容としては以下の内容があげられます。
・虫歯治療や抜歯
・歯冠(詰め物、被せ物)の修復、充填
・歯周病の治療
・義歯の作成、調整
・口腔ケアや口腔衛生の指導
・摂食、嚥下機能回復のためのリハビリテーション
その他、歯石の除去やレントゲン撮影なども可能で、診察用の椅子などを用意している歯科医院もあります。
診断や治療にかかる費用は外来より少しかかりますが、保険は適用されるので安心して治療を受けられます。
治療内容によっては週に一回など定期的な診療も行え、歯科医院内での治療とほとんど同レベルの治療が可能です。
現在、歯科訪問診療を利用されている方の8割以上は後期高齢者です。
高齢者にとって口腔や歯の健康は、食べる喜びに留まらず、健康寿命やQOLにも大きく影響します。
また、誤嚥性肺炎などの重大なトラブルを防ぐためにも、歯の健康や飲み込む力の維持は重要です。
歯科訪問診療では、虫歯や歯周病の治療に留まらず、口腔環境の改善や飲み込む力の維持といった総合的な「食べる力」を改善していきます。
体が不自由になり、外出することが難しくなった高齢者の方にとって、自分の歯で食べられることは大きな喜びと生きる意欲に結び付きます。
また、HPSや社会性不安障害などの精神的障壁から、歯科医院への通院が困難な方もいます。
歯の痛みやうまく食べられないことによる生活上の支障は、そうした方にとっては大きな苦痛に繋がります。
歯科訪問診療はただ単純に歯のトラブルを緩和するだけでなく、様々な立場にいる方々の生活の質を高め、日々を豊かに快適に暮らす支援となるものです。
歯科訪問診療がさらに一般的な選択肢になっていくためにも、積極的に利用していきましょう。
おわりに 最期まで自分の歯で食べるために
自分の歯で食べられる方は、そうでない方に比べて全身の健康度が高く、より健康的に長生きするとされています。
食事は、単なる栄養補給ではありません。
口から食べることは、顎を動かすことによる運動機能への刺激、味わうことによる感覚神経や脳の活性化など、様々な作用をもたらします。
さらに大切なのは、食事によって味覚による快感、幸福感をもたらされ、親しい人と一緒に食べることが満足感、生きる意欲に繋がっていくことです。
そしてそれは、ともすると社会から孤立しがちな高齢者、障がい者や入院患者、様々な事情から外出の困難な方にこそ必要なものです。
近年対応可能な歯科医院が増えている訪問診療ですが、必要数からはまだまだ不足しているのが現状です。
自分や大切な方の歯の健康を守れるためにも、多くの方が歯科訪問診療を利用できる環境作りが求められています。
歯科医師 院長 森川真作